身体全体の色素が足りない様な、淡い様な印象の女の子。髪も色素が足りてないのか、人形の髪の様。嘘か本当か『低血圧』を理由に遅刻ばっかり。気付いたら居なくなってる様な、早退魔。
『休むともったいない。一回休むなら、三回遅刻した方がいい。』
と、馬鹿なのか利口なのか、そんな事を言ってた。

可愛らしいけど近寄りがたい雰囲気。たまたま理系の授業で席が隣だった。

その授業の先生は去年までは至って普通だったのに、脳梗塞か何かで倒れ、日常生活には支障がない程度に回復し授業を執り行ってた。喋り方はどもり、良く物忘れをする様になった。物忘れを脳梗塞と結び付けて冗談を飛ばす。

全然面白くなく、悲しすぎて笑えなかった。

そんな先生が教える授業には、助手の先生がいるから成り立ってた。実験が多い所為か、隣の席のその子とは次第に打ち解けていった。惰性な学校生活の、ほんの僅かの楽しい時間。

進学に殆ど関係無い授業。先生がチョットアレだから、気怠くゆっくりとした時間
が流れてた。

『別に怒ってる訳じゃないのに、不機嫌にみられる。』
『髪を染めてる訳じゃないのに、頭髪検査で文句を言われる。』
『遅刻が多いから、授業についていけない。』
色々な話を聞いてあげたけど、そんな事を言ってるその子の顔は、どことなく不機嫌そうに見えてた。


でも、そんな横顔を見てるのが好きだった。

思えば、好きだったのかな?
微妙な距離感が良かったのかな?

学校前に迎えにくる車に乗り込んだ彼女を見て嫉妬もした。
学校に車で迎えにくる親なんて、殆どいない。


そんな微妙な距離のまま卒業を迎え、離れ離れ。
今みたいに、携帯で気軽にメールを送れる時代だったなら、すれ違わなかったのかな?と勝手に思う。


時間は流れる。




成人式の次の日に約束をして、夜の七時に待ち合わせ。
七時に待ち合わせ場所に行ったけど、彼女は来なかった。

留守番電話。

『まだですか〜?』
『もう30分待ってまーす。』
『一時間過ぎました。』
『圏外だけど何かあったのー?』
『もう帰りまーす。』
『・・・』
と幾つものメッセージ。

時間を確認すると1時過ぎからメッセージは入ってる。

シチとイチの取り違え。擦れ違いな約束。

成人式で朝まで飲んでたりするし、1時と勘違いするとは思いも寄らなかった。
夜のシチ時に待ち合わせをする疾しさと、昼のイチ時に待っていてくれた愛らしさ。

そーだよ。あの頃の待ち合わせに夜なんてなかったね。

留守電を聞いた後、暫らく自分の馬鹿さ加減に呆れつつ電話。
『何してたのー?』
『寒いのに凄い待った』
『馬鹿。』
『明日帰るんでしょ?これからじゃあ、もう会えないよ。』
そんな台詞にいい訳をするのも忘れ、謝って電話を切った。

淡い思いは淡いままでいいのかなーと思た。それなのに、何日か経ち電話がきた。
前日の成人式の後に、一緒に飲んでた友達から電話で『1時』『7時』の誤解は溶けたみたい。一方的に責めた事を謝ってきた。久々に会うのに昼間じゃなく夜を選んでた、自分の卑劣さを謝りたかった。

『また今度会おうよ』

そう言ってくれた。


そんな擦れ違いだらけだったのに、会えた。昼間に約束をしたのに『眠いから夜のシチ時でいいよ』と言われた。半年前と同じ場所・同じ時間に待ち合わせ。
『変わった〜。髪伸びたねー。』
『何、その色ー?』
『いま何やってるのー?』
擦れ違った時間を埋めるように話は尽きなかった。

『せっかく会ったんだしお酒でも飲まない?』
『帰ってきてるんだし、奢ってあげるよ。』
『高いお店は落ち着かないから駄目だよー。』。

教室で制服を着て話をしてたイメージしかないから、なんだか変な感じ。


『あの頃好きな人いた?』
その質問に上手く答えられず、いたのかなー?と流してしまった。

『絶対上に上がるんだと思ってたよー。勉強できてたのに〜。』
『隣の席で、先生より詳しく教えてくれた。』
『遅刻した分のノートも見せてくれた。』
聞いて思い出すような話を沢山してくれた。

『財布が軽くなる位沢山食べてね〜』と言ったけど、今何をしてるのか聞けなかった。何だか解らないけど、寂寥感で胸が一杯になった。

話し方や所作。

こんな大人びてたかな?


『おかげで勉強が好きになった。』
そんな事をいってくれて涙が出そうになった。


不意に腕を組んでくる。
全てを許そうとする心。
それを知って虚無的になる心。

無駄な虚脱をくりかえすネオン街。
手だけじゃなくカラダを結べば、気分は晴れたのかな?



爪にしたピアス。

もう二度と会う事も無いだろうけど、元気にしてるのかな?