きっと捨てなきゃいけないってのは解ってたけど、何かがひっかかって捨てれなかったモノ。こんなモノ、捨てて欲しいに決まってる。昔の彼女からの手紙。

高校最後のクリスマス近くに付き合いだした彼女。
可愛くもない。何の取り柄もなさそう。人を疑う事を知らなそう。外見しかみてなさそう。
後3ヵ月もないし、せっかく勇気を出して告白してきたんだから遊んであげてもいいかなーなんて思って付き合った彼女。
付き合い出したら浮かれてばっかりで、何か癪に触る。二人で居ればそんなんでもないのに、周りに誰かが居るとやっぱり癪に触る。内心イライするのは、ギスギスしてる自分の所為。それなのに、当たってしまう。つまらない振りで悲しませてしまう。

手作りのケーキ。
手作りのマフラー。
バイト代を貯めて買ったんだろう、時計。

付き合って1ヵ月程度のヤツに何で? 一度でも好きだなんて囁いた? 名前ですら呼んで無いってのに・・・

クリスマスを過ぎてからは電話だけ。忙しいだなんて口実。会いたくない。面倒臭い。

こいつがヤリマンでカスみたいな女だったら、楽しかったのに・・・そんな風に思ってた。
重くて重くて仕方なかった。年が明けて、学校へ。数える程度。
お前より、友達の方がタイプ。お前と話すより、友達と話してた方が楽しい。お前より・・・
本当ヒドイ人間だと思う。表面は優しくしてるのに、内面は腐り切ってる。
でも、表面しかみないお前が悪いんだよ?
卒業を前に免許を取る為の、合宿へ。
一緒に居る時間も残り少なくなってきてるのに、置き去り。それなのに、こんなヤツのどこがいいの? 免許とかいったって1日数時間受けるだけ。後は知り合ったバカな連中と遊んでるだけ。
夜、電話をすると『会いたい』。お前は会いたくても、オレは会いたくない。内心そう思う。
合宿の途中で卒業式。
特に悲しくもなく終わる。
卒業式後に、彼女は後回しで仲のよかった連中で夜の街へ消える。こいつらとも、二度と会わなくなったりするんだろーなーなんて思うと異様なテンションになり、バカみたいに騒ぐ。

楽しい時間に、現われる。何でここにいるのがわかるの? 強制連行。
お前のクラスの人間ばっかり。こんな所に連れてこられて、なんなの? 罰ゲーム? 酔ってるから、まぁ知らない連中だろうと楽しいんだけどね。
・・でも、お前のその遠慮がちな目が気に食わない。
なんなんだよ!!


お前の親友とキス。
ゲームとか言ったのは、お前の友達連中だろ? 知った事じゃない。
よくよくみると、親友ちゃんはかわいいな。キスなんかしちゃったら、このままお持ち帰りなんじゃん?
酔ってるからいいや。
考えるのも面倒臭い。

気付けば、お前とお前の女友達二人。無理矢理、既成事実を作らせようとしないで。終電が無くても、ホテルになんかいかないよ? 
四人でならいいけど・・・。
こんなヤツのどこがいいの?中身をきちんと見てよ。気付いてよ。

結局、怠くなりその場から去って別な友達と合流して騒ぐ。騒ぐ。

街が自分たちのモノになった様な錯覚。やがて朝は来る。

嘘みたいな夜が過ぎ、現実は訪れる。また免許の続き。ここには男も女もいる。
会えるのは、最後に見送りに来てくれる日だけ。・・・こなくていいのに。

最後まで何もしなかった。手さえ握らなかった。名前ですら呼ばなかった。すぐに忘れて欲しかった。

それなのに、遠く離れてしまったこんなヒドいヤツなのにマメに届く手紙。くだらない事を便箋にビッシリ書き込みやがって。
読むのに時間がかかるのに・・
本当に人を疑わないバカ。バカ過ぎるから裏切られるんだよ。頼むから苦しめないで。

騙しながら日々は続く。手紙も届く。
『会いたい』
会いたくない。
会いたくない。
会う資格なんか無い、ごめん。

ピリオドは返した手紙。正直に綴る。

恨んでよ。憎んでよ。嫌ってよ。そうしてくれれば、どんなに楽か。

たまに届く手紙。相変わらずつまらない事をビッシリ書いてくる。ただ、別れた事によって微笑ましく思う。無邪気な君が。

幸せになって欲しいと思う。
ずっと、バカ正直で居て欲しいと思う。

そんな手紙が捨てられずにいた。苛々して、嫌悪して、でも気付けば心を支えてくれてた手紙。
もっと他に書く事ないのかよーと笑ってしまう。本当にくだらない手紙。何枚も何枚も書いてくれた手紙。支えてくれてありがとう。
ずっとしまっておいて、いつか返そうと思ってたけど、もういいよね。

裏切る事が出来ない人をこっちで見つけたんだ。お前なんかより100倍かわいくて、大切な人が。
その子はきっと、この手紙の存在を忌々しく思うだろう。

返そうと思ってしまっておいたけど、返す機会は訪れないだろうし、もう支えてもらう機会もないだろうから。

朝方やってくるトラックに手紙は回収されて、長い長い煙突から東京の空に。